猫は、”長日繁殖動物”といい、光を浴びる時間の長さ(日照時間)によって繁殖周期がコントロールされています。
日照時間が長くなる1月から8月頃にかけてメス猫は何度か発情期を繰り返します。猫の妊娠期間は2ヶ月程度なので、春〜夏にかけて出産が多くなります。
動物病院では春ごろから「子猫を拾ったんですが、どうすればいいですか?」とご相談を受けることや連れてこられることが多くなります。
子猫の育て方の注意点は?温度や湿度は?ミルクってどうやって与えるの?ご飯はいつから?排泄はどうするの?………など疑問で不安になります。
子猫を拾ってもわからないことがいっぱい!
この記事では、子猫の育て方のポイントをお伝えします
- 子猫を拾ってするべきこと
- 子猫の成長の様子、週齢(年齢、日齢)
- 子猫を育てるときに気を付けること
- 子猫のミルクの与え方、離乳食への切り替え
- 子猫の排泄のさせ方
- 子猫の社会化とは
子猫を拾ったら…まず保温!
まず1番にすることは”体温の保持”
生まれたばかりの子猫は、自力で体温を維持することができません。そのため、すぐに低体温になり危険な状態に陥ってしまいます。
子猫では、生後2週齢ぐらいから生後1ヶ月齢ぐらいにかけて徐々に体温調節機能が発達していきます。
そのため体重が500g未満の子猫を拾ったら、保温することが大切です。
具体的には、湯たんぽ(お湯を入れたペットボトルでも良い)などをタオルで包んだものや、ホットカーペットなどを準備しましょう。
そして、適切な温度で温め、湿度50〜60%程度にした寝床を作ってあげましょう。
適切な温度は子猫の体温調節機能の発達段階に合わせて行う必要があります。以下に生まれてからの週齢と適切な温度の目安をお示しします。
この時注意したいポイントが3つあります。
①低温やけどに気を付ける
子猫の体に直接湯たんぽやホットカーペットが長時間当たってしまうと低温火傷をすることがあります。
②安易にお風呂に入れない
体が汚れている子猫をすぐに洗いたくなることもあると思いますが、子猫にとっては大きな負担になることもあります。
特に衰弱していたり痩せている子猫では、お湯で体を濡らすことによって体温が奪われて低体温になってしまい、ますます状態が悪くなってしまいます。
③低体温のまま、ミルクや食べ物を与えない
低体温のままミルクや食べ物を与えてしまうのは危険です。
低体温では嚥下力(飲み込む力)や腸の運動が低下していることが多いため、無理に与えてしまうと吐いて誤嚥したり、腸重積を起こし命に関わります。
保温したら病院に連れていこう
子猫は、痩せていたり長時間ミルクを飲まないと、すぐに低血糖や脱水を起こし危険な状態に陥ってしまいます。
保温をしたら、すぐに動物病院に連れていき、子猫の様子を診てもらいましょう。
今の週齢や先天性の病気や感染症がないか?ノミ・ダニや寄生虫の有無を診てもらい、どのように食べ物を与えて、育てていけばいいのかも教えてもらえると思います。
その他分からないことがあったら先生に相談しましょう。^
迷子の場合、飼い主がいないか確認しよう
迷子の子猫の場合、すでに飼い主がいて、そのお家から外に誤って出てしまった可能性もあります。
特に首輪やリボンが付いている場合はその可能性が高いです。
保護して育てたけれども、他に飼い主がいたとなると後々トラブルになる可能性があるのでしっかりと手続きを踏むのが良いでしょう。
子猫の日齢の目安
子猫を拾った場合、いつ生まれたのかは正確にはわかりませんが、大体の成長過程を診て、日齢の目星をつけることができます。
新生児期(4週まで)
離乳期(4~6週)
週齢の目安とするのは体重よりも発達具合から見ると分かりやすいです。
例えば、目がまだ開いていない場合は1週齢未満の子猫です。乳歯が生えていなければ3週齢未満といった感じです。
拾ってすぐは痩せていて、体重は少なめになることが多いので体重ちゃんと成長しているかの参考とするのが良いでしょう。
子猫の食事 ミルクを与えよう
新生児期
新生児期の子猫はまだ歯が生えていませんので母乳やミルクを飲んで育ちます。
母猫からの母乳をしっかり飲んで成長ができているなら、それで構いません。
人口哺乳を行う際は、猫用ミルクを子猫用の哺乳瓶で飲ませます。
ここからは子猫のミルクの与え方をお伝えします。
- 子猫用ミルク
- 子猫用哺乳瓶
- 計量スプーン(ミルクに添付されているもの)
- 電子天秤
- お湯(溶かす用)
子猫用ミルク
猫用ミルクは、粉のものや液体のものがあります。
動物病院やペットショップ、ホームセンター、インターネットなどで購入できます。
獣医さんがよく動物病院で使っているのは共立製薬のエスビラックパウダー
僕もエスビラックパウダーをよく使っているよ
安心してオススメできます!
猫のミルクコーナーにはシニア期用のミルクもあるため間違わないように注意しましょう。
因みにヒトが飲む牛乳は、乳糖が分解できず下痢をしたりする可能性があることと、栄養成分(猫で必須のタウリンなど)が足りていないため、飲ませてはいけません。
哺乳瓶
哺乳瓶はなるべく吸い口が細いものの方が飲みやすいです。
オススメは森乳サンワールドの哺乳瓶
先端が細くなっているので、子猫がとても良く吸い付いてくれます。
煮沸消毒もできるので衛生的です。
哺乳瓶の消毒
使う前には必ず消毒をしましょう。
ミルクはとても栄養価が高いため、哺乳瓶の雑菌が繁殖しやすいので注意が必要です。
消毒には煮沸消毒がおすすめです。鍋に入れて5分間熱湯で煮沸しましょう。
その他の消毒の方法としては、ヒトの赤ちゃんの哺乳瓶の消毒につかうミルトンを使うのも良いでしょう。煮沸する手間が省けるため便利です。
ただし、次亜塩素酸ナトリウムの臭いを嫌がることもあるため、ミルクを飲むのを嫌がる際は控えた方が良いでしょう。
ミルクの準備
粉ミルクの量とお湯の割合は、必ずミルクに記載されている規定通りの割合で作りましょう。
ミルクは毎回必ず新しいものを都度作りましょう。
飲み残しは必ず破棄して、次に飲ませることは絶対にしないで下さい。
粉ミルクは沸騰させた後のお湯で溶かしましょう。
粉ミルクは溶けにくくダマになって溶けずに残ることもあります。ダマにならないようにするには、
①お湯をいきなり全量入れるのではなく、最初は半分くらいのお湯に溶かす
②消毒された別皿で溶かして哺乳瓶に入れる
などすると良いでしょう。
ミルクの温度は36~38℃に冷まして調節し、飲ませる前に熱くないか確認しましょう。
熱いミルクを調節する際は数分放置するか、哺乳瓶ごと冷やすと良いでしょう。
ミルクを飲ませる量は、目安はパッケージ記載の量がありますので参考にしてください。
参考として、以下にミルクを与える間隔と一日の目標の量を示します。
表はあくまで目安の量です。子猫がミルクを飲む量は体の大きさや発達段階によって異なります。
そのため、もし子猫がミルクをよく欲しがる場合は追加で作って与えても構いません。
一番大事なことは子猫が元気にしていて、体重が毎日しっかり増えていくかどうかです。
子猫の胃の最大容量は、体重100gにつき4~5mlですが、十分に栄養が取れず、栄養不良になってしまっている子猫は、胃が小さくなってしまっているため、最初は少なめに与えましょう。
ミルクの与え方
あお向けにして飲ませたり、無理矢理飲ませたりすると、鼻からミルクが溢れたり、ミルクが気管に入って誤嚥してしまうことがあり危険ですのでやめましょう。
鼻からミルクが溢れる、哺乳瓶からミルクが速く出る場合は、哺乳瓶の乳首の穴が大きいことが原因の一つとして考えられます。ミルクの出具合を確認して乳首を交換しましょう。
最初、人工乳の味や吸い口のゴムの乳首に慣れるまでは、上手にミルクを飲むことができないことがありますが、徐々に慣れてくるため根気よくあげましょう。
子猫の食事 離乳食を与えよう
離乳期
離乳食としては高栄養の缶詰やウェットフード、ドライフードをお湯やミルクを混ぜてふやかすと良いでしょう。
高栄養の缶詰としてはヒルズa/d、ロイヤルカナン退院サポートなどが挙げられます。
子猫用のドライフードだと「ヒルズ サイエンス・ダイエット キャットフード キトン」、「ロイヤルカナン FHN キトン 子猫用」がおすすめです。
他のメーカーでももちろん構いません。「子猫用」記載を確認して購入しましょう。
離乳食は最初からたくさん食べさせると消化しきれず下痢することがあるので、ミルクと併用して徐々に切り替えていきましょう。
しっかり離乳食の固形フードが食べれるようになるまでは、ミルクの併用を続けましょう。
子猫の排泄をさせよう
新生児期の子猫は、自力で排泄することができません。
ミルクを飲ませた後は、毎回温かいお湯で濡らしたガーゼやティッシュで陰部や肛門周りを刺激して排尿・排便を促してあげましょう。
3週齢が過ぎてくると、徐々に自力での排泄ができるようになってきます。
5〜6週齢程になると排泄場所を覚え始めますので、食後や寝起きなど排泄しやすい時に、猫用トイレに連れ行ってあげましょう。
子猫が順調に成長しているか、毎日体重を測りましょう!
子猫の出生時の体重は90〜110gです。
しっかりミルクを飲めていれば、1日10〜15gずつ増加するので,1週間も経つと50〜100g増加します。
毎日体重を測り、目安とすると良いでしょう。
体重を測るタイミングは統一して測ることをおすすめします。
例えば、排泄させてミルクを飲ませる前は一番正確な体重が測定できます。さらに、ミルクを飲ませた後に体重を測定し、ミルクを飲ませる前の体重を差し引きすると、実際に飲んだミルクの量も分かります。
体重測定は1kgのキッチンスケールと器を使うと測りやすいです。
体重は表やカレンダーなどに記録すると体重の増加が分かるので是非行ってください。
新生児期の子猫は、成長スピードが早く、体重がどんどん増えていくのが普通です。
もし毎日体重を測って増えが悪ければ、ミルクがうまく飲めていない、もしくは寄生虫がいたりなど健康面で問題のある可能性があります。
その際はすぐに動物病院に連れて獣医さんに診てもらいましょう。
子猫の社会化期
そのため、この時期に他の猫や動物、家族だけでなく様々な人に接する機会を作り、コミュニケーションを学んだり、様々な刺激(音、匂い、場所など)に触れることが重要です。
様々な刺激を与えて学習することで、その後の問題行動が少なくなります。
そして一緒に暮らしやすい性格の良い猫に育てることができます。
まとめ
子猫の育て方について解説しました。
それではおさらいです。
- 体重が500g未満の子猫を拾ったら、保温することが大切。そして、病院に連れていこう
- 迷子の子猫の場合、警察に届け出ましょう
- 1ヶ月齢未満の歯の生えていない子猫はミルクで育てよう
- 乳歯が生えてきたら徐々に離乳食を与えよう
- 排泄をさせてあげよう
- 毎日体重を測って記録しよう
- 社会化のために色々な経験をさせよう
もし、少しでも分からないことがあったり、子猫の様子がおかしかったら、かかりつけの獣医さんに気軽に質問しましょう。
最後に今回の記事が少しでも飼い主様の疑問に解決し、どうぶつ達の健康に繋がれば幸いです。