【質問コーナー】犬の高血圧症 食事や交配、正しい血圧測定で気をつけることは?

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アイキャッチ 犬の高血圧症の質問

高血圧はよく耳にする病気ではないでしょうか。

ヒトの方ではよく生活習慣病の一つとして高血圧症と診断されることも少なくないと思います。

実は犬や猫といったどうぶつ達にも高血圧症はあります。

もりぞー先生

どうぶつ達の高血圧症は馴染みがあまりないと思いますが、注意が必要な病気です。
高血圧症によって、腎臓病や心不全、網膜剝離や脳の症状に繋がる可能性があります。

今回は、先日お問い合わせで、この高血圧症に関するご質問を頂きましたのでご紹介させていただきます。

飼い主さま

私は、イタリアングレーハウンドの男の子を飼っているのですが、半年ほど前にかかりつけの動物病院にて高血圧症と診断されました。
キッカケとしては健康診断での検査で偶然判明ししました。
血圧は160mmgと高いのですが、高血圧症に関連するような症状はありません。

高血圧はいろいろな病気に繋がるため、すぐに追加で精密検査をお願いしました。
検査を行ったところ、幸いにも血液検査、尿検査、心電図、眼科検査、神経学的検査のすべてにおいて異常はありませんでした。
現在、降圧剤のアムロジピンとベナゼハートを飲んでいます。

高血圧症に罹ってることで2点ご質問させていただきます。

①食事はどのようなものが良いのでしょうか?
もやし、ひらたけ、ほうれん草などの野菜が大好きで、フードにトッピングするとよく食べています。ドッグフードはあまり高くないものをあげているのですが、これを変更した方が良いのでしょうか?

②高血圧はもし交配すると遺伝するのでしょうか?
できれば子犬を残したいと考えています。しかし、高血圧症が子犬に遺伝するのであれば交配はあきらめようと考えております。

このご質問いただいた内容から、ポイントを絞って以下の通りにまとめました。

今回の質問のポイント
  • 犬の高血圧症とは?
  • お家のワンちゃんが高血圧症の際に、ドッグフードやおやつなどの食事で気を付けるべきこと
  • 犬の高血圧症が遺伝するのか
  • 頂いた検査結果からのもりぞー先生の考察
  • 正確な検査や評価を受けるために
もりぞー先生

以上のポイントを抑えて解説しています。
ではよろしくお願いします。

イタグレさん

よろしくお願いします!

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目次

犬の高血圧症

犬の高血圧症は「持続的な収縮期血圧の上昇」と定義されています。
つまり、上の血圧(最高血圧)がずっと高いことです。

もりぞー先生

犬や猫では、上の血圧で評価します。
ヒトの場合は上の血圧と下の血圧で評価しますね。

高血圧の原因

高血圧症は原因によってザックリと3つに分類されます。

高血圧の分類
  1. 状況高血圧  :緊張や興奮などによって血圧が高くなること 生理的な変化で病気ではない
  2. 二次性高血圧 :慢性腎臓病などの他の何か病気やお薬などの原因があって、高血圧症になること
  3. 特発性高血圧 :はっきりした原因はないが、高血圧症になること

このうち、治療が必要になる高血圧症は②二次性高血圧と③特発性高血圧です。

もりぞー先生

重度の高血圧症でなければ、状況高血圧の可能性も十分あります。
この場合、繰り返し血圧を測定して治療が必要な高血圧症なのかを慎重に考える必要があります。

犬の高血圧症と食事との関係性

飼い主さま

食事が原因で高血圧になるの?

ヒトでは食生活が高血圧症に関連しています。

食事中の塩分、アルコールの摂取などが高血圧症に繋がり、糖質や脂質、コレステロールの過剰摂取が動脈硬化などの生活習慣病に関わります。

そのため、これらを控えるように気を付ける必要があります。

もりぞー先生

一方で、犬の場合は塩分量に関する注意は必要と考えられていますが、それ以外の糖質、脂質、コレステロールに関する治療指針は知る限りありません。
この理由に関しましては私見も入りますが、以下のように考えられます
①犬では多くが総合栄養食であるドックフードを主体とした食事を常日頃から食べているため、過剰な糖質、脂質、コレステロール過多にはなりにくいということ
②ヒトと比較して犬においては高血圧症に関連した血管障害の疾患(動脈硬化、アテローム性動脈硬化症など)の発生がほとんどないこと

もりぞー先生

つまり、ドックフードを食べていて、おやつも控えめなバランスの取れた食生活であれば基本的には問題ありません。

高血圧症による合併症 標的臓器障害(TOD)

高血圧症による標的臓器障害

高血圧症が慢性的に持続すると、体の臓器に負担がかかりダメージを与えます。
これを標的臓器障害(TOD:Target Organ Damage)といい、特に脳、眼、腎臓、心臓血管といった重要な臓器に影響を及ぼします。

もりぞー先生

高血圧症の治療の目的は、この標的臓器障害(TOD)のリスクを減らすことになります。

高血圧症の重症度

血圧が高ければ高いほど、標的臓器障害(TOD)のリスクは高まります。

犬では収縮期血圧の高さから、標的臓器障害(TOD)のリスクに基づいて高血圧症は分類されます。

この高血圧症の分類は、高血圧の重症度を分類するものです。

これによって、その高血圧症が緊急性が高いものかを判定し、迅速な対応が必要か判断するための指標となります。

サイトハウンド種の高血圧症

イタリアングレーハウンドはサイトハウンドと呼ばれる犬種に分類されます。

サイトハウンドとは、視覚(サイト)に優れた狩猟犬(ハウンド)です。

もりぞー先生

足が長くて、しなやかな体つきが特徴の犬種ですね!
日本ではやはり小型犬のイタリアングレーハウンドが人気です。

イタグレさん

僕のことですね!

サイトハウンドに分類される犬種は以下の通りです。

サイトハウンドに分類される犬種
  • イタリアングレーハウンド
  • グレーハウンド
  • ウィペット
  • ボルゾイ
  • サルーキ
  • アフガンハウンド
  • アイリッシュウルフハウンド
飼い主さま

ほとんどが大型犬ですね。

サイトハウンドの血圧

そんなサイトハウンドは元々、他の犬種よりも血圧は少なくとも10~20mmHg程度は高めになることが分かっています。

そのため、検査結果の解釈にもそれを考慮して判断する必要があります。

もりぞー先生

理由は定かではありませんが、犬種に特異的なので遺伝的な要因が関連していると思います。

国際獣医腎臓病研究グループ(International Renal Interest Society:IRIS)はサイトハウンドの慢性腎臓病のガイドラインにおいて、高血圧の重症度を以下の様に記しています。

血圧の有無血圧基準値の範囲からの超過(mmHg)
正常血圧<+10
軽度高血圧症+10~+20
高血圧+20~+40
重度高血圧+40
サイトハウンドなどの一部の高血圧犬種における、血圧による犬の慢性腎臓病のサブステージ分類

そのため

もりぞー先生

血圧が少々高めであっても、それがサイトハウンドでは正常であったり、軽症の可能性があります。

今回のイタグレさんの血圧について

イタグレさん

それでは、今回ご相談させてもらった僕はどうでしょうか

もりぞー先生

サイトハウンドという犬種を考慮すると、血圧が160mmHgであれば、軽度高血圧症の可能性があると考えられるでしょう。
なぜなら、サイトハウンドという他の犬種よりも高めの血圧になることと、少々の血圧の上昇であれば緊張や興奮の影響の可能性もありますからね。

しかも、追加の精密検査において問題がなかったということなので、標的臓器障害(TOG)のリスクも高くはないと判断できます。

飼い主さま

リスクが高くないということなので、少し安心しました、

もりぞー先生

かかりつけの先生がしっかりと検査を提案してくれたおかげですね!

高血圧症の食事

飼い主さま

高血圧になったら、どんな食事を与えたらいいの?

もりぞー先生

高血圧と食事はヒトでも良くいわれますよね!
一番、知りたい話ではないかと思います。

ここでは、ACVIMのコンセンサスステートメント(いわゆるアメリカ獣医内科学会のガイドラインに基づき、もりぞー先生の私見も交えて解説します。

塩分を控える

高血圧症はヒトと同様に、犬も塩分量を控えることがガイドラインにて推奨されています。

もりぞー先生

高血圧症がある場合は、やはり塩分は気を付けなければいけませんね!
理由は以下の通りです。

健康な犬は基本的には塩分が多い食事を取ったとしても血圧には大きく影響しないと言われています。

一方で、慢性腎臓病にかかっている場合には、高塩分食により血圧が上がる可能性があると言われています。

塩分の過剰摂取により血圧があがれば、さらなる標的臓器障害を起こし腎臓への負荷を与えてしまいます。

もりぞー先生

慢性腎臓病×高塩分食=血圧の上昇ということです。

また、犬の高血圧症の原因は慢性腎臓病が関連した二次性高血圧症が多いです。

つまり、高血圧症の症例は潜在的に慢性腎臓病をもっている可能性があり、こういった子たちに高塩分食を与えることで血圧が上がるリスクが懸念されます。

もりぞー先生

高血圧症が見つかった時点から、背景に慢性腎臓病が潜んでいる可能性を考えた方がよいという考えですね

これらの事から、高塩分食は高血圧症の犬、特に慢性腎臓病の犬では、高塩分食の摂取さらなる血圧の上昇を引き起こすリスクがあります。

ゆえに、高血圧症の犬は高塩分食は控えた方が良いといえます。

塩分食の高い犬のおやつ

飼い主さま

高血圧症の子に高塩分食を避けた方が良いということは分かったけど、具体的にどういったものを避けた方が良いの?

もりぞー先生

分かりました!お教えします!
塩分量の高いものは以下の通りです。

塩分量の多い食べ物(高塩分食)

犬用のおやつ

  • ジャーキー
  • ビスケット
  • 煮干し

家族からもらいがちなもの

  • 食パン
  • チーズ
  • ハム
  • ベーコン
もりぞー先生

ワンちゃんが大好きなおやつばかりですが、健康のため控えるようにしましょう。

イタグレさん

我慢します!

ドッグフードの種類は高血圧だけならこだわらなくて良い

ドッグフードは腎臓病など他の病気が見つかっていないのであれば大きな制限はありません。

多くのドッグフードはAAFCO(アフコ)の栄養基準を満たした総合栄養食です。

そのため、先ほど述べた塩分量に関しましても、高塩分食には該当しませんので問題ありません。

つまり、総合栄養食を食べていれば食生活は基本的に問題ないということですね

それだけで、栄養バランスの整ったご飯が食べれていて高血圧症のリスクになることはないと言えます。

因みに、野菜類やその他のトッピングに関しても、与えて多少は与えて差し支えはないと思います。

大まかな目安としては、ドッグフードが90%、トッピングの野菜などは10%までに留めると良いでしょう。

しかし、その他の病気がある場合には、それに基づいたフードの種類を選んだ方が良いでしょう

例えば、膵炎の病歴があるなら低脂肪食のドッグフード、尿路結石の病歴があるなら尿路結石用のドッグフードと言った感じです。

もりぞー先生

つまり、基本的には一般的な総合栄養食で良いが、病気が併発している場合にはそれ用のドッグフードがよいということですね

犬の高血圧症と食事の糖質・脂質の制限の必要性は?

飼い主さま

家のワンちゃんが高血圧だったら、ヒトの高血圧症ように食事の糖質脂質は控えなくていいの?

食事中の糖質量、脂質、コレステロールの過剰摂取、アルコールの摂取などが動脈硬化などの生活習慣病に関わります。

そのため、これらを控えるように気を付ける必要があります。

もりぞー先生

一方で、犬の場合は糖質、脂質、コレステロールに関する治療指針は知る限りありません。
この理由に関しましては私見も入りますが、以下のように考えられます
①犬では多くが総合栄養食であるドックフードを主体とした食事を常日頃から食べているため、過剰な糖質、脂質、コレステロール過多にはなりにくいということ
②ヒトと比較して犬においては高血圧症に関連した血管障害の疾患(動脈硬化、アテローム性動脈硬化症など)の発生がほとんどないこと

もりぞー先生

つまり、ドックフードを食べていて、おやつも控えめなバランスの取れた食生活であれば基本的には問題ありません。
糖質脂質を制限したドックフードに変える必要もありません。

血圧降下剤とグレープフルーツなどの柑橘類は要注意

血圧降下剤を服用しているということなのでグレープフルーツなどの柑橘類は避けた方が良いでしょう。

薬が効きすぎてしまう可能性があります。

特に、アムロジピンという血圧降下剤で治療中は気を付けなければなりません。

治療中に気を付けたい柑橘類は以下の通りです。

血圧降下剤を飲んでいる時に食べてはいけない柑橘類
  • グレープフルーツ
  • 夏みかん
  • はっさく
  • ぶんたん
  • スウィーティー
もりぞー先生

なお同じ柑橘類でもみかんやオレンジなどは問題ありません。

犬の高血圧症は遺伝するのか

犬の高血圧症は遺伝する可能性はあると思います。

ヒトにおいては、高血圧症は生活習慣病でありますが、環境因子と遺伝因子が関連する病気とされています。

つまり、食生活や運動習慣も高血圧のリスクを高めますが、両親から受け取った遺伝子も高血圧の発症に繋がるという事です。

事実、医学的な研究・調査では高血圧症に関連する原因遺伝子が特定されております。

したがって、犬の高血圧症もヒトと同様に遺伝的な要素が病気の発症に関連していると考えられます。

もりぞー先生

厳密には犬の高血圧症における遺伝的な要因は証明されている訳ではありません
しかし、遺伝する可能性は十分あるので高血圧症の犬を繁殖させることは推奨されないですね

高血圧症と交配してもよいかどうかについて

もりぞー先生

最終的な判断には、高血圧症の診断によります。

特に、治療前の血圧の高さが重要である事と、高血圧症の原因が検査で異常の認められない特発性高血圧症には注意すべきでしょう。

血圧が中程度から重度に高い

血圧が160mmHg以上(サイトハウンドなら170mmHg以上)の中程度から重度の特発性高血圧症であるならば、交配は絶対におすすめできません。

理由はやはり高血圧症が遺伝する可能性が高いためです。

血圧が軽度に高い

血圧が140~159mmHg(サイトハウンドなら150~169mmHg)の軽度の特発性高血圧症であるならば、交配はおすすめできません。

遺伝するような病態の可能性があるため注意が必要です。

もりぞー先生

血圧測定を繰り返し行って、慎重に考えましょう。

血圧が正常

血圧が140mmHg未満(サイトハウンドなら150mmHg未満)であるならば問題ありません。

もりぞー先生

病気ではないためです、交配は問題ないと考えられます。

今回のイタグレさんの高血圧症は遺伝するのか、交配してもよいか

血圧がサイトハウンド種で160mmHgとのことなので、血圧が軽度に高いという評価になります。

この血圧が病気によって高くなっている可能性もあり、緊張や興奮によって高くなっている可能性もあります。

もりぞー先生

そのため再検査を行いながら、交配するかどうかは慎重に検討する方が良いでしょう。

イタグレさん

わかりました!

頂いた検査結果からのもりぞー先生の考察

もりぞー先生

血圧がサイトハウンド種で160mmHgとのことなので、血圧が軽度に高いという評価になります。

軽度の血圧の上昇であれば、動物病院に行ったことによる興奮やストレスなどの影響も考えられます。
また、今回ご相談いただいた子はサイトハウンドという犬種に該当するため、元々血圧が高い傾向にあります。

もりぞー先生

血圧の上昇が、病院に来たことでのストレスが関連しているかどうかは、その時の様子をよく観察する必要があります。
ずっとブルブル震えている、ワンワン吠え続けている、パンティングしているなどがあれば、血圧は少しあがりますね。

この様に多くの影響を受けて血圧は変動します。

もりぞー先生

特にサイトハウンドの血圧に関する解釈は、正直なところ少し難しいですね。
高血圧に関する症状がないとき、血圧だけが高いのがサイトハウンドという犬種によるもので本当にいいのか……

そのため、軽度の血圧の上昇の場合、一度だけでの測定では正確な血圧の評価は難しいことがあります。

もりぞー先生

すべての検査結果や診断にも言えることですが、やはり”グレーゾーン”というところはあります。
大きな異常や高い数値の場合は、明らかに病気ですと診断出来ます。
しかし、小さな異常や少しだけ高い数値の場合には、それが病気の初期なのか、あるいはその子のなかでは正常なのかという判断がしにくくなります。緊急性は高くはないと考えられますが、時間をかけて慎重に診断を進めていくことが大切になります。

正確な検査を受けるためにオススメすること⓵血圧が本当に高いか

高血圧症の診断には⓵血圧が本当に高いかどうかということ、②高血圧の影響が出ていないかということの2つが重要です。

まず、正確に血圧が測定できているかはとても大切です。

なぜなら、ちょっとしたことで血圧がうまく測れず、異常に高くあるいは低く数値が出てしまうことがあると、誤診に繋がってしまためです。

飼い主さま

では犬の血圧測定で気を付けること何でしょうか?

もりぞー先生

正確に血圧を評価していくために、できる工夫がいくつかあります。

血圧を正確に測定するためにできること
  1. 定期的に血圧を測定を受ける
  2. 興奮が影響する場合には、ワンちゃんが落ち着いているタイミングで測定する
  3. 緊張が強く怖がりのワンちゃんは飼い主さんと一緒に血圧測定を受けてみる
  4. 異常が出た場合には日にちを変えて繰り返し検査を行う
  5. 自宅で血圧を測定してみる

定期的に血圧測定を受ける

成犬になってから、健康診断として血圧測定を定期的に受けておくと良いでしょう。

特に、サイトハウンドの犬種の場合には若い頃の血圧測定をおすすめします。

理由は2つあります。

若くて健康なときの血圧の数値を知っておく事で元々の血圧がわかります。

また、定期的に血圧測定を受ける事で、血圧が上がったという変化に気付くことが出来ます。

これによって、血圧の評価の違いがでたり、高血圧症の早期発見に役立ちます。

例えば、血圧が160mmHgの2つのケースを例に挙げましょう。

一つは、血圧が若い頃の血圧が130mmHgだった子が、歳をとってから160mmHgになってしまった場合です。血圧は重度に高いので、直ぐに血圧を下げる治療を考えた方が良いでしょう。

一方で、サイトハウンド種で血圧が元々高めで若い頃から140〜150mmHgだった子が、160mmHgになったとしたらです。この場合は血圧は少し高いですが、以前と比較してもやや血圧が上昇したという評価になります。そのため、再検査や精密検査を受けて慎重に治療の必要性を確認した方が望ましいと思います。

このように、血圧が160mmHgであったとしてもケースによっては診断や治療のアプローチが異なります。

さらに、健康診断で定期的な血圧測定を受けて入れば高血圧症の早期発見に繋がります。

実際、犬において高血圧が診断されることが多いタイミングとしては、

①高血圧症に関連するような病気(慢性腎臓病や副腎皮質機能亢進症など)が見つかったとき

②網膜剥離などによって目が見えにくいあるいは失明したとき

のいずれかが多いです。

特に②に関しては、目に対する治療は手遅れになり、失明した目を見えるようにすることは出来ません。

もりぞー先生

手遅れにならないためにも、高血圧症の早期発見のため血圧測定を定期的に行うことおをおすすめします。

興奮が影響する場合には、ワンちゃんが落ち着いているタイミングで測定する

興奮は血圧を高くしてしまいます。

元気で活発な性格のワンちゃんは動物病院に入って少し落ち着く場所で時間をおいてから測定すると良いでしょう。

緊張が強く、怖がりのワンちゃんは飼い主さんと一緒に血圧測定を受けてみる

恐怖や不安を感じやすい性格のワンちゃんは、飼い主さんから離れ動物病院の看護師さんや獣医さんに預かってもらって血圧測定を受けると、血圧が高くなります。

それに加えて、震えが止まらない状態になると血圧自体が正確に測定できなくなります。

その打開策の1つとしては、当たり前なことですが飼い主さんと一緒にいてなるべくリラックスした状態で血圧を測ることです。

もりぞー先生

一緒にゆっくり食べられるようなオヤツを与えながら血圧を測るのも方法です。

異常が出た場合には日にちを変えて繰り返し検査を行う

血圧の高さが少し高いくらい(血圧が140~159mmHg(サイトハウンドなら150~169mmHg))であれば、日にちを変えることも一つです。

繰り返し動物病院に来ることで少しずつ慣れていき、スムーズに正確な血圧測定ができるようになっていきます。

自宅で血圧を測定してみる

犬猫向けの家庭用血圧測定器があり、自宅で血圧を測定出来ます。

自宅での血圧測定は、ストレスが少なくリラックスした状態で血圧を測る事ができ、頻繁に行うことができるメリットがあります。

もりぞー先生

日常的に血圧測定が出来るという事ですね。
以下のようなケースでおすすめです。

  • 動物病院で血圧を測ろうとすると、興奮や緊張によって、いつも血圧が高くなる
  • 動物病院に連れて行くのをとても嫌がる
  • 高血圧症に繋がる病気が見つかったので、定期的に測定したい
  • 高血圧症と診断されたので、こまめに血圧を測る必要がある

正確な検査を受けるためにオススメすること②高血圧の影響が出ていないかを診てもらう

血圧が高くなると目や腎臓、脳、心臓血管に影響が出てきます。

血圧が十分高い場合には、これらの臓器が大丈夫か検査を受けることをおすすめします。

具体的には尿検査や心エコー図検査をうけ、出来れば眼底検査を正確に評価できる先生に一緒に診てもらうと良いでしょう。

もりぞー先生

特に眼底検査は、おそらく多くの獣医さんも見慣れている検査ではないので正確な検査自体が少し難しいですね。
正直、僕は眼底検査は得意ではありません…。
眼科に強い先生がいる動物病院だと、眼底を観察するための眼底レンズの使い方が上手だったり、眼底を検査する機器として眼底カメラをお持ちの場合もあり、高血圧に対する目の評価も正確にできると思います。

血圧を正確に評価するためには、繰り返し測定を行なったり、その他の検査も組み合わせることが必要です。

まとめ

もりぞー先生

今回は高血圧症と診断されたお話しました!
犬における血圧測定の重要性がお伝え出来たかと思います。

動物医療における現状としては、犬における血圧測定が広く普及していないません。

ヒトの医療と違い、犬や猫においては病院に受診した際に血圧測定までをルーチンの検査として行っている動物病院はまだまだ少ないです。

また、犬や猫は動物病院に行った事で、とても緊張したり興奮したりする子も少なくないため正確な検査や評価が難しい事や血圧測定をする手技が煩雑であることも理由の一つでしょう。

しかし、最近では小型の血圧測定器がバージョンアップしています。

フクダMEという企業から精密な小型の血圧測定器が動物病院向けに発売されています。

今後より血圧測定が普及いていくかも知れません。

また、今回はワンちゃんの例でしたが、ある程度ネコちゃんにも同様に活用できます。

もしこの記事が気に入っていただけたら、多くの方に読んでいただけるように知らせていただけたら嬉しく思います。

最後に、この記事を読んでいただき、少しでも多くの飼い主様とどうぶつ達の不安を解決出来たら幸いです。

参考文献
論文情報:ACVIM consensus statement: Guidelines for the identification, evaluation, and management of systemic hypertension in dogs and cats
※正確な論文の解釈をするなら、原文を読むことをお勧めいたします。

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