ヒトでは心臓病などの循環器疾患の患者さんの治療の一つに食事療法があります。
食塩を控え、コレステロールのとりすぎに気を付け、適切なカロリーを心がけるようにし、食べるものを選び献立を考えて食事療法を行います。
一方で、犬における食事療法は心臓病用の療法食を与えることが一般的です。
療法食と呼ばれるドッグフードは各フードメーカーから販売されています。
これを利用することで簡単に食事療法を行うことができます。
しかし、簡単に食事療法が行えるために、適切な食事を選択することが重要になります。
なぜなら、間違った食事を与えてしまうことで持っている病気の目的とした治療ができなくなるだけではなく、病態の悪化など健康上の問題を引き起こすリスクもあるからです。
特に、慢性的に心臓病にかかっている場合には、余命にも大きく影響するため、適切な食事療法を行うことはとても重要になります。
そのため、適切な食事管理を行うためには、「罹っている病気の知識」とその「食事療法の目的」について知っておく必要があります。
この記事では獣医もりぞー先生が、犬の心臓病で代表的な僧帽弁閉鎖不全症の治療のガイドラインを基に、心臓病のワンちゃんのための食事療法について詳しく解説します。
- 心臓病の食事療法ってホントに大事?
- 犬の心臓病って予防できる?
- いつからやるの?
- 心臓病の治療中の栄養管理は?
- うちの子は心臓病用の食事をホントに与えた方がいい?
- 食事療法中に気を付けること
- で結局、どれがオススメ?
この様な疑問を解決するキッカケになると思います。
特に、適応となるフードはフローチャートを用いて解説します。
個人的にオススメするメーカーはロイヤルカナンです。
ドライフードなら早期心臓サポート+関節サポートかエイジングケア、ウエットフードなら心臓サポート缶になります。
これらの食事がなぜオススメなのかについても解説します。
※この記事は飼い主様個人での療法食の購入を推奨するものではありません。病気の治療は必ず正しい診断に基づいて行われるため、獣医師の診察が必要です。お薬と同時に必ず動物病院で処方を受けてください。
- ガイドラインに基づいた心臓病の食事療法の内容と適応
- 日本で販売されている心臓病用としてホントに使える療法食
食事療法が必要な理由
重度の僧帽弁閉鎖不全症を慢性的に患っていることを慢性心不全といいます。
慢性心不全の合併症として「心臓悪液質」と呼ばれる栄養不良状態に陥ります。
この心臓悪液質になると、特に筋肉量が減少することで痩せていくようになります。その結果、余命に大きく悪影響を及ぼすことになります。
この心臓悪液質は不可逆的な慢性栄養障害であるため、これを治療することは困難です。
そのため、これを避けるために適切な栄養管理を行うことは僧帽弁閉鎖不全症はじめとする心臓病をもち、慢性心不全のワンちゃんにとって、とても重要なことになります。
犬の僧帽弁閉鎖不全症のACVIMガイドラインにおいても以下の様に記載があり、食事療法を強く推奨してます。
- 心臓悪液質は、心不全に関連する筋肉または除脂肪体重の喪失として定義され、臨床的に関連する体重減少を伴う場合と伴わない場合があります。悪液質は、予後にかなりの悪影響を及ぼし、治療するよりも予防する方がはるかに容易です。(推奨クラス:I、エビデンスレベル:中程度)
したがって、心臓悪液質によって痩せていくことを予防することが慢性心不全のワンちゃんのために食事療法を行う最大の目的になります。
食事療法で心臓病の予防はできるの?
ヒトでは食事療法は①病気の予防⓶病気の手前での治療③病気の悪化させないための治療などの目的で行われます。
特に、動脈硬化によって引き起こされる狭心症や心筋梗塞は、食事による「危険因子」が重なることで発症することが多いので、その危険因子を減らすために食事療法を行います。
しかし、犬はヒトと違い狭心症や心筋梗塞は非常に稀です。そのため、動脈硬化を予防する目的で食塩やコレステロールを制限することはありません。
犬で最も多い心臓病は僧帽弁閉鎖不全症です。この疾患の原因は不明で、遺伝的な要因があると言われていますが、少なくとも食事が原因でなる訳ではありません。
そのため、食事療法を行うことで心臓病の発症を予防することはできません。
しかし、だからといって太っていて良いというわけではありません。
肥満と心臓病が合わさると、生活に非常に大きな支障をきたします。
心臓病を罹ったときに太っていると、軽い運動で息が上がり、非常に疲れやすくなってしまいます。
また、肥満は呼吸に影響を及ぼします。
肥満によって呼吸しにくい状態にあるため呼吸の予備能力も低下しいる中で、心不全を起こして肺水腫になってしまったときには、より呼吸困難に陥りやすくなってしまいます。
したがって、心臓病の予防はできませんが、適切な食事管理による体重管理は心臓病の発症前にも大切なことです。
- 犬は食事療法で心臓病の発症を予防することはできない
- 適切な食事管理による体重管理は心臓病になる前からでも大切
食事療法はいつから?
食事療法で心臓病の予防はできません。
そのため、心臓病になってから治療の一環として食事療法を検討します。
アメリカ獣医内科学会(ACVIM)は犬の僧帽弁閉鎖不全症のガイドラインを出しています。
ガイドラインに関しては以下により詳しく解説していますので是非参考にしてください。
そのガイドラインでは犬の僧帽弁閉鎖不全症を病気の進行具合によって4段階のステージに病期分類しています。
ガイドラインでは僧帽弁閉鎖不全症の治療が必要なのは病気の進行が見られるステージB2からと推奨されています。
食事療法もステージB2から行います。
そのため、全ての心臓病の犬で食事療法が必要な訳ではありません。病気になっていないステージAはもちろん、病気の初期であるステージB1も食事療法は適応ではありません。ライフステージに合わせた食事をオススメします。
ステージB2からは食事療法を始めます。病態やステージに合わせて推奨される食事の内容は変わっていきます。
- 心臓に負担がかかっていると判断される頃から食事療法をはじめる
- 僧帽弁閉鎖不全症においてはステージB2から
心臓病の栄養管理ってどうするの?どんな食事がいいの?
心臓病をもつワンちゃんの栄養管理の内容は、以下の3つのポイントになります。
心臓病の栄養管理をするドッグフードのポイント
- 最適な筋肉量や体型を維持するために、十分なタンパク質とカロリーが含まれるもの
- しっかりと食事を摂取するために、嗜好性の高いもの
- ナトリウムを軽度に制限したもの
十分なタンパク質とカロリー
心臓悪液質を避けるためには、筋肉量を維持する十分なタンパク質の摂取が必要です。
高タンパク質の食事がオススメです。
さらに、十分なカロリー摂取も必要です。
ガイドラインではステージCの慢性心不全のワンちゃんでは、体重1kgあたり60kcalのカロリー摂取を推奨しています。
必要な食事量を計算して、一日の目標量としましょう。
嗜好性の高いもの
しっかりとした量の食事を食べてもらうために、ごはんがおいしいかはとても重要です。
せっかくタンパク質やカロリーの量が適切な食事であっても、食べてもらわなければ意味がありません。
療法食のみで食べてくれない場合は、食事を温める、お湯でふやかしてみる、缶詰やパウチなどのウエットフードを混ぜる、器を変えてみるなどの方法を行ってみましょう。
どうしても食べてくれない場合には、少量のトッピングは構いません。ただし、塩分量の多いものは避けましょう。
例えば、ササミやツナをボイルしただけものは塩分も含まれておらず、タンパク質も摂取できるためオススメです。
栄養のバランスが崩れないようにトッピングはフードの1割までにしましょう。
ナトリウムを制限
ナトリウムとはいわゆる食塩のことです。
塩分の多い食事をすると、水をたくさん飲み、そしてその摂取した水分が体から排泄されにくくなります。
水分が過剰に蓄積することで、心臓病を持っているワンちゃんでは手足がむくんだり、腹水が溜まったり、肺水腫になりやすくなったりします。
そのため、適切なナトリウムの制限が重要になります。
もちろんフードだけではなく、塩分の多いおやつやトッピングは避けましょう。
ナトリウムの制限する程度は、病態やステージによります。後ほど解説します。
心臓病の療法食を食べた方が良い?食事療法はワンちゃんのどんなポイントから考えるの?
食事療法を行うワンちゃんには、食事の好み、心臓以外の持病など様々な要因が絡んできます。
実際に、心臓病があるワンちゃんで心臓病の療法食を食べた方が良いのかの判断基準は、主に以下の3つのポイントを踏まえて考えます。
心臓病用の療法食が適応かを判断する、ワンちゃんの3つのポイント
- 心臓病の進行具合
- 重度の慢性腎臓病の有無
- 十分な量を食べられるか
心臓病の進行具合
心臓病の進行具合から、療法食が必要か、必要であればその食事のナトリウムの制限の程度はどれぐらいが良いかを判断します。
心臓病の進行具合を、ガイドラインを参考にここでは4段階に分けます。
ガイドラインを参考にした心臓病の進行具合
- かなり初期の心臓病:心臓の異常ありますが、治療を必要としません。食事療法を含む治療の必要は現段階ではありません。
- 心臓への負担が見られる心臓病:治療を始める必要があります。可能ならナトリウムを軽度に制限しましょう。
- 心不全を起こした、あるいは起こしそうな状態の心臓病:食事療法を強くオススメします。ナトリウムを軽度に制限しましょう。
- 治療で簡単に病状が安定ないほど重度の心臓病:可能であれば積極的なナトリウムの制限をしましょう。
①初期の心臓病で、心臓への負担もほとんどないか軽度であれば、ドッグフードのナトリウムの制限は必須ではありません。僧帽弁閉鎖不全症であればステージB1に当たります。
まずは、塩分の多いおやつは控える習慣を考えていきましょう。
②画像検査で明らかな心臓病の拡大、血液検査でNT-proBNPの顕著に高くなっているなどの異常があり心臓への負担が大きくなっていると思われる場合には、フードの軽度のナトリウムの制限を推奨します。僧帽弁閉鎖不全症であればステージB2に当たります。
適応となる療法食を試して、少しずつ食事療法を始めましょう。
③さらに病気が進行して検査において重度の心臓の拡大が見られる場合、心不全をおこして肺水腫になったことがある場合などはナトリウムを軽度に制限した療法食を強く推奨します。僧帽弁閉鎖不全症であればステージB2の後半~Cに当たります。
※ACVIMガイドラインは、フードのナトリウムの制限をステージCの治療において強く推奨しています。
積極的に食事療法を取り入れていきましょう。
④治療で簡単に病状が安定ないほど重度の心不全がある場合には、症状の緩和を目的として、可能であればより積極的なナトリウムの制限を推奨します。僧帽弁閉鎖不全症であればステージDに当たります。
しかし、ナトリウムを大きく制限した食事への変更によって、嗜好性が下がってしまい、食事を食べずに痩せてしまうのは良くありません。その場合には、口にできるものを優先して与えることが重要になります。
重度の慢性腎臓病の有無
重度の慢性腎臓病がある場合、食事中のタンパク質を制限することを考慮します。
摂取したタンパク質が体内で代謝されてできる尿毒素の排泄が減ってしまうことで尿毒症になってしまうためです。
尿毒症になると、食欲不振や嘔吐などの症状が見られ、ゴハンが食べられなくなってます。
重度の腎臓病(慢性腎臓病のIRISステージ4)によって尿毒症になってしまう場合には、タンパク質を制限した食事で尿毒症に対するケアを行うことをオススメします。食事の内容は腎臓病用の療法食です。
腎臓病用の療法食はナトリウムの制限もかなり行っているため、ナトリウムの観点からは心臓への負担はないため問題ありません。
注意が必要なのは、全ての腎臓病を併発しているワンちゃんが腎臓病療法食をオススメするわけではないということです。軽度~中程度の腎臓病(慢性腎臓病のIRISステージ2~3)であればタンパク質の制限は必要ありません。
この場合、心臓病と腎臓病の進行具合を比較して、心臓病が進行している場合には心臓病の食事を優先し、しっかりとタンパク質の摂れる食事を選択しましょう。
十分な量を食べられるか
一番重要な項目です。
特に、療法食を初めて与える際は、お家のワンちゃんの食いつきや完食するかをしっかり観察する必要があります。
十分な量を食べられるか、言い換えると体重が減らず体型が維持できるくらい食べられるかが重要になります。
お家のワンちゃんの食いつきが悪く、好みに合わないことによって十分な食事量が摂取できず、体重が減ったり、筋肉が痩せたりするのは本末転倒です。
心臓悪液質が進行してしまいます。
さらに、心臓病が進行すると食欲が減っていくワンちゃんが多いです。この時に、心臓病用の療法食にこだわりすぎることで、ワンちゃんが十分な量の食事を食べられず痩せてしまうケースはよく見られます。
これは特に、しっかりとお家のワンちゃんの様子を見られる飼い主様で陥ってしまいがちです。
こうならないためには、大前提として「心臓病のワンちゃんは痩せさせないようにする」ということを念頭に置き、食べる量が少ないワンちゃんはしっかりと食べられる食事を優先して与えましょう。
食餌管理がうまくいかない場合には焦らずに、しっかりと食べられるものを与えながら、食べてくれる食事をゆっくり考えていきましょう。まずは、お家のワンちゃんのペースに合わせて、できることから実行することが大事です。
- 心臓病用の療法食を与えるかのポイントは①心臓病の進行具合⓶慢性腎臓病の有無③しっかりした量を食べられるかの3つを考える
- 心臓病の進行具合によってナトリウムの制限の程度が異なり、推奨される食事が変わる
療法食の実際 オススメのメーカーは?
2021年9月現在、日本で購入可能な心臓病用と謳った療法食を扱うメーカーは6社あり、食事の種類はドライフード8種、ウエットフード3種です。
ここから、①十分なタンパク質とカロリー、②ナトリウムの軽度の制限の2つの栄養学的な観点から食事を搾ります。
すると、実際に心臓病用の食事として利用できると考えられるのはロイヤルカナン(ROYAL CANIN)、ヒルズ(Hill’s)、ドクターズ(Dr.’s)、ベッツラボ(Vet’s Labo)の4社からドライフード6種、ウエットフード2種です。
中でもロイヤルカナンは心臓病用として利用できるドライフードが3種、ウエットフードが1種あります。
迷ったらロイヤルカナンがオススメです。
療法食の実際 フローチャートからの選び方
ここからは、心臓病のワンちゃんの実際の療法食を紹介します。
心臓病の療法食は様々な種類がありますが、それらの大きな違いはナトリウムの制限の程度になります。
ナトリウムの制限の程度は、お家のワンちゃんの心臓病の進行具合(僧帽弁閉鎖不全症ではACVIMステージ分類がこれに当たります)により変わります。
すなわち、心臓への負担の程度や心不全の発症有無、心不全の治療の抵抗性に応じて最も推奨される食事は異なります。
ここでは、心臓病の進行具合をフローチャートにし、それに合った療法食を紹介します。
以下のフローチャートをみて、お家のワンちゃんがどれに当たるが見てみましょう。
①初期の心臓病
心臓病の療法食である必要はありません。
ライフステージに合わせた食事内容をオススメします。
塩分の多いおやつは控えましょう。
もちろん、「心臓病がご心配で今後の病気の進行するのを想定して早めに食事を切り替えておきたい場合」や、「ワンちゃんが食事の好みが強く早めに食事に慣れておきたい場合」には、軽度にナトリウムの制限を行っている食事でも構いません。
その場合はロイヤルカナンの早期心臓サポート+関節サポート
湿疹がでやすい、痒みがあるなど皮膚のトラブルが多いワンちゃんの場合には、ヒルズのダームディフェンスもオススメです。
特に、ダームディフェンスは犬のアトピー性皮膚炎の療法食として設計されたゴハンです。DHAとEPAといったオメガ‐3脂肪酸が他のフードの3倍程度含まれています。
オメガ‐3脂肪酸は抗酸化作用のある成分であり、皮膚の炎症を抑えるだけではなく、心臓悪液質に対しても効果があることが示されております。
また、ダームディフェンス シチュー缶
②心臓への負担が明らかにある心臓病
軽度のナトリウムの制限をオススメします。
ロイヤルカナンの早期心臓サポート+関節サポートかエイジングケア、ヒルズのダームディフェンスがオススメです。
適応となる療法食を試して、少しずつ食事療法を始めましょう。
③心不全を起こしそう、あるいは心不全になったことがある心臓病
軽度のナトリウムの制限を強くオススメします。
ロイヤルカナンの早期心臓サポート+関節サポートかエイジングケア、ヒルズのダームディフェンス
積極的に食事療法を取り入れていきましょう。
利尿薬を内服している場合には、お薬をなるべく減らす目的でよりナトリウムの制限をしたフードを始めるのも方法になります。
その場合は、ロイヤルカナンの心臓サポート(ドライ、缶)
ドライフード
ウェットフード
④心不全を頻繁に繰り返していて、治療に対して抵抗性がある難治性の心臓病
可能であれば、よりナトリウムの制限をした食事をオススメします。
ロイヤルカナンの心臓サポート(ドライ、缶)、ドクターズのハートケア、ベッツラボの心臓サポートがオススメです。
ドライフード
ウェットフード
特に、心臓サポートのウエット缶
しかし、実際には食事の変更を嫌がったり、食べなかったりするワンちゃんが少なくありません。
その際は、今までの療法食を続けるか、食欲がない場合は食べられる物を優先して与えましょう。
- ドライフードは早期心臓サポート+関節サポートかエイジングケア、ウェットフードは心臓サポートのウエット缶がオススメ
- よりナトリウムの制限が必要であればロイヤルカナンの心臓サポート(ドライ、缶)、ドクターズのハートケア、ベッツラボの心臓サポート
食事療法中のモニタリング
ガイドラインにおいても治療中のモニタリングは強く推奨されています。
- 食欲不振に関してよく問診し、薬の影響やその他の特定可能な原因から食欲不振を起こしているなら、それをの治療します。(推奨クラス:I、エビデンスレベル:専門家の意見)
- ボディコンディションスコア(BCS)と体重を記録し、注意する必要があるようなボディコンディションスコア(BCS)の変化や体重の増減がある場合は原因を調査します。(推奨クラス:I、エビデンスレベル:専門家の意見)
慢性心不全のワンちゃんで最も注意が必要な症状は食欲不振です。
食事を食べないことで、痩せたり体重が減ったりすることが良くないです。
これを防ぐために、お家では食欲がしっかりとあるか、与えた食事を完食しているかをよく観察しましょう。
可能であれば、体重測定や体型チェックも一緒に行うと良いでしょう。
体重や体型がキープできていれば、しっかりと食事管理ができています。
痩せてしまう場合には、食欲や食事内容に問題がないか、その他の病気がないかを考えます。動物病院で診察を受けたり、獣医さんや看護師さんと相談したりすると良いでしょう。
療法食以外の栄養管理
慢性心不全を治療中は療法食での食事療法のみだけではなく、心臓病の状態に合わせて推奨される栄養管理があります。
カリウム
心臓病の治療中は血液検査で血清電解質濃度(ナトリウム、カリウム、クロール)のモニタリングが行われます。
特に、カリウムの値が心臓の収縮に影響します。
カリウム値が高くなることも低くなることもあります。
カリウムが高くなる時にはカリウム含有量の高い食事や食品は避けることが望ましいでしょう。
逆に、カリウムが低くなる時には、トッピングやサプリメントなどで補給することが推奨されます。
特に、低カリウム血症はトラセミドと呼ばれる利尿薬の治療中によく見られます。
マグネシウム
心不全が進行していたり、不整脈が見られる場合にはマグネシウムが低下していることがあります。
マグネシウムの低下がある場合にはマグネシウムの補給が推奨されます。
オメガ‐3脂肪酸
心臓悪液質になっている場合、体の中で炎症性サイトカインが産生されることで食欲不振や筋力低下を招くことがあります。
それを抑えるためにオメガ‐3脂肪酸の補給が適応になります。
犬用のサプリメントも豊富です。
食欲不振や筋力低下や体重減少が見られる場合には検討しましょう。
心臓病が原因で痩せてきているワンちゃんはDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸をしっかりとるが大切です!
オメガ3脂肪酸の補給にはアンチノールをはじめとしたサプリメントが数多くあります。
気になる方は以下のボタンよりアンチノールの公式サイトであるベッツペッツにアクセスできますのでご覧ください。
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アンチノールは多くの動物病院の獣医さんも推奨しているサプリメントです。
僕もよく処方しています!
- カリウムやマグネシウムの異常が見られることがあり、療法食だけでなく、他で補充することが推奨される
- 食欲不振や筋力低下などの心臓悪液質と思われる症状が見られる場合には、その治療のためにオメガ‐3脂肪酸の補給を検討する
まとめ
犬の心臓病の食餌療法について解説しました。
それではおさらいです。
- 心臓病の食事療法の目的は心臓悪液質を予防することであり、食欲不振や筋力低下を招かないようにする
- 犬は食事療法で心臓病の発症を予防することはできないが、適切な食事管理による健康維持は心臓病になる前からでも大切で肥満にならないようにする
- 心臓に負担がかかっていると判断される頃から食事療法をはじめる(僧帽弁閉鎖不全症においてはステージB2から)
- 犬の心臓病の食事療法は、十分なタンパク質とカロリーが摂取でき、ナトリウムを軽度に制限したものが良い心臓病用の療法食を与えるかを考える
- ポイントは①心臓病の進行具合②慢性腎臓病の有無③しっかりした量を食べられるかの3つを考える
- 心臓病の進行具合によってナトリウムの制限の程度が異なり、推奨される食事が変わる
- 犬の心臓病の療法食のメーカーはロイヤルカナンがオススメ。ほか、ヒルズ、ドクターズ、ベッツラボがある
- ドライフードは早期心臓サポート+関節サポートかエイジングケア、ウェットフードは心臓サポートがオススメ
- 慢性心不全では食欲不振に注意し、体重や体型がキープできているかをモニタリングする
- 療法食以外の栄養管理も場合によっては必要で、カリウムやマグネシウム、オメガ‐3脂肪酸の補給を検討する
今回ガイドラインに基づいた心臓病の食事療法について解説しました。
しかし、実際には同じ検査結果でも解釈が異なり、その子その子によって治療の方向性も異なります。
それは獣医療が検査・治療に当たる獣医師、犬の健康や環境での問題点、飼い主様の立場など様々な要因を考慮して行われるためです。
そのため、ガイドラインを完全に順守した治療を行うのではなく、ガイドラインに沿って目の前のご自身のワンちゃんの治療の最適解を獣医師と飼い主様の信頼関係の下で一緒に考えていくことが重要であると考えます。
特に難しい病気の場合、獣医さんの説明をよく聞いて、ご家族のワンちゃんに合った治療の方法を相談して決めていくのがよいでしょう。
もし、少しでも分からないことがありましたら、かかりつけの獣医さんに気軽に質問すると良いでしょう。
また、冒頭でもお伝えしましたが、この記事は飼い主様個人での療法食の購入を推奨するものではありません。病気の治療は必ず正しい診断に基づいて行われるため、獣医師の診察が必要です。お薬と同時に必ず動物病院で処方を受けてください。
最後に今回の記事が少しでも飼い主様の疑問に解決し、どうぶつ達の健康に繋がれば幸いです。
論文情報:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jvim.15488
※正確な論文の解釈をするなら、原文を読むことをお勧めいたします。