自宅で酸素を吸入する治療を在宅酸素療法(HOT)といいます。
特に、小動物における在宅酸素療法は自宅に酸素室を設置してお家で酸素療法を行うことを指します。
ワンちゃんやネコちゃんが心臓病や呼吸器の病気になった時には、お家に酸素室を設置して呼吸が苦しくならないように備えます。
もりぞー先生も多くのご家族様に自宅での酸素室の設置をおすすめします。
特に心不全を起こして肺水腫になって緊急入院したワンちゃんやネコちゃんが元気になった後には、よくお話しします。
しかし、お家のワンちゃんネコちゃんが病気になるとご家族様は驚きと不安でいっぱいになってしまってます。
その状況で更に、お家に酸素室を置きましょうと突然勧められるので戸惑ってしまう方も少なくありません。
酸素室って大丈夫?危ないことはない?
酸素室を使う時に何か注意は必要?
この様な疑問が出てきます。
酸素室を自宅に設置する時には注意する事があります。
この記事では、酸素室の使用・設置に関する注意点をご紹介します。
この記事を読めば、酸素室を置く時の疑問や不安を解決してスムーズに適応することが出来ると思います。
- 犬や猫などの小動物において在宅酸素療法を行う際の注意点
- 酸素室を適切に使う方法
ストレスをかけないようにする
在宅酸素療法を行う目的は、おウチの子がお家にいながら病気でも呼吸が苦しくなく楽に日常生活を送れる事です。
実はこれが最も重要な事です。
どうぶつで在宅酸素療法を行う場合の大きなハードルの一つになります。
酸素室を置くとお家の様子は大きく変わります。
どうぶつの目線になると、見慣れない機械とそれに繋がったケージの中で急に入ることをすすめられてしまう事になります。
どうぶつの性格にもよりますが、場合によってはこれが大きなストレスになる事もあります。
例えば、心臓病のワンちゃんが酸素室の中でケージから出たくてずっと泣き続ける場合がそうです。逆に呼吸困難を招きます。
これでは本末転倒です。
なるべくストレスのかからないようにしながら、酸素室を上手に使いましょう。
以下に、酸素室をストレスなく使う工夫をリストアップします
- 初めはケージの扉は締め切らず酸素室から自由に出入り出来るようにする
- ケージの中に使い慣れた毛布やベットをおく
- なるべく広い酸素ケージを使う
- 音が気になるどうぶつは酸素濃縮器と酸素ケージをなるべく離す
呼吸困難の際の酸素療法は特に要注意
少し呼吸が速い場合は軽度の呼吸困難を起こしている可能性があります。
軽度の呼吸困難になっても、酸素を吸入して楽になってくれます。
この間に、かかりつけの獣医さんに相談して治療を調整したり、動物病院に行く準備をすることができますね。
しかし、それ以上に呼吸が苦しい際は注意が必要です。
注意点は2つです。
急に呼吸が苦しくなった場合
急に呼吸が呼吸が苦しくなった際にまず、酸素療法を行います。
慢性的な心不全や呼吸器の病気がある場合
慢性的な心不全や呼吸器の病気で、重度の呼吸困難になった場合も注意が必要です。
体の中に二酸化炭素が溜まっている状態で起こる病態です。
CO2ナルコーシスといいます。
さらに、このような時に以下のように対応しがちです。
酸素室にいても呼吸が落ち着かない……
酸素が漏れているのかな?
そして、酸素濃度を上げるため、酸素室の気密性を高めようとします。
この場合、吐いた息から出た二酸化炭素の排気も上手くいかなくなるので、酸素室の中が高濃度の二酸化炭素で満たされてしまいます。
これによって、より呼吸困難を悪化させてしまう危険性があります。
絶対に酸素室を密閉しないでください。
酸素濃度が適切に上がっているか
レンタル会社に設置してもらい適切に使用すれば酸素濃度は30〜40%に保たれます。
しかし、トラブルが起こると酸素室内の酸素濃度が維持できずに十分な酸素室の効果を発揮出来ません。
酸素濃度が上がらない原因としては以下が考えられます
- 酸素ケージが大きく開けっ放し
- 酸素濃縮器から酸素室を繋ぐチューブが曲がっているあるいは外れている
- 酸素濃縮器からの酸素流量が足りない
- 酸素濃縮器の加湿のためのカップが緩んでいる
- 酸素濃縮器が壊れている
酸素室の扉を少し開けながら使用する際には酸素濃度が分かるようにすると良いでしょう。
酸素ケージは換気も大切
酸素室内は十分な酸素を満たしておく事が大切ですが、それと同じくらい換気も重要です。
この二酸化炭素がたまり過ぎると、呼吸に悪影響を及ぼしてしまいます。
そのため、酸素室は中の空気が循環する様にする必要があります。
具体的な方法は以下の通りです。
- 酸素室は密閉せずにある程度空気が出入りする様にする
- 酸素濃縮器からの酸素流量を多く保つ
- 定期的に扉を開けて空気の入れ替えをする
火気に気をつける
酸素濃縮器から出る酸素は高濃度の酸素です。
そのため、周囲で火を使うと発火する危険性があります。
特に、酸素濃縮器や酸素室の周囲2mでは火気厳禁です。
火災の発生を防ぐために十分注意しましょう。
- 酸素濃縮器や酸素室の周囲で火気や可燃性のあるものを置かない(特にストーブやカイロに注意)
- 酸素濃縮器に水がかからないようにする
- 酸素濃縮器を直射日光の当たらない、換気の良い場所におく
- 酸素濃縮器の周りを壁や家具から20cm以上離す
- 酸素濃縮器のフィルターをこまめに掃除する
- コンセントはタコ足配線にしない
- 部屋にホコリや動物の毛がたまらないように、こまめに掃除する
まとめ
酸素室を設置する時に気をつけることについて解説しました。
それではおさらいです。
どうぶつ側の注意点
- ストレスに気を付ける
- 急激に高濃度の酸素を吸入させない
酸素ケージ管理の注意点
- 酸素濃度が適切に上がっているか確認する
- 酸素室の換気も行う
- 酸素室や酸素濃縮器の周りは火気厳禁
犬や猫などの小動物において、酸素室は重要な治療法の一つです。
特に、自宅に酸素室を設置する在宅酸素療法は、飼い主様と愛犬・愛猫の生活を守っていくために非常に重要です。
もし、お家の愛犬・愛猫が病気になった際には酸素室のレンタルを考えていただければと思います。
最後にこの記事が少しでも飼い主様の疑問に解決し、どうぶつ達の健康に繋がれば幸いです。