犬や猫の心疾患や呼吸器疾患は、年齢や環境の変化、遺伝的な要因など様々な要因によって発症する病気です。
これらの病気によって、元気がない、すぐに疲れてしまう(運動不耐)、さらには息が荒く呼吸が速い(呼吸困難)などの症状を引き起こします。
これらの症状は心疾患や呼吸器疾患からくる酸欠状態(低酸素血症といいます)によって起こり、お家のワンちゃんネコちゃんの生活や健康に大きな影響を与えます。
そこで、最近では在宅酸素療法が注目されています。
在宅酸素療法とは、病気のどうぶつ達がが自宅で酸素の吸入することでで、低酸素血症を改善し、病気の症状を緩和する治療法です。
犬や猫の場合は、ペット用酸素室を使用することで、在宅酸素療法が実施できます。
ヒトの在宅酸素療法は酸素ボンベからの酸素を鼻に設置するチューブから吸入しますね。
本記事では、自宅でのペット用酸素室の使用方法について解説し、犬や猫の心疾患や呼吸器疾患に対する酸素療法の効果についても紹介します。
- ペット用酸素室が犬や猫の在宅酸素療法に効果的であること
- ペット用酸素室の種類や選び方、使い方、維持管理方法
- ペット用酸素室を適切に使用することで、犬や猫の心疾患や呼吸器疾患の症状を緩和し、健康状態を改善することができること
犬や猫の心臓病に対するペット用酸素室の効果
心臓病によって低酸素血症が発生する場合があり、低酸素血症が続くと、ペットの体内に酸素が十分に行き渡らず、臓器に悪影響を与える可能性があります。
つまり、心臓病が原因で全身が酸欠状態になってしまうってことですね
犬の心臓病と酸素療法
犬の心臓病のひとつである僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の僧帽弁が弁の変性により正常に閉じなくなる病気で、左心房と左心室の間に逆流が生じます。
これが重度になり肺水腫を起こすと、心臓から十分な酸素が送られず、低酸素血症が発生します。
低酸素血症が続くと、犬は呼吸困難や息切れなどの症状を示し、活動量が低下する場合があります。
ペット用酸素室を使用することで、犬の呼吸がスムーズになり、呼吸困難や息切れなどの症状が軽減されます。
さらに、低酸素血症によって引き起こされる疲れなどの症状も軽減され、犬の生活の質を向上させることができます。
猫の心臓病と酸素療法
また、猫の心臓病のひとつである心筋症でも、ペット用酸素室を使用することで効果が期待できます。
心筋症は、心筋の形態(かたち)や心臓の機能(はたらき)が異常になる病気で、重度になると肺水腫や胸水が溜まることにより低酸素血症が発生することがあります。
ペット用酸素室を使用することで、低酸素血症を改善し、呼吸困難や息切れなどの症状を軽減することができます。
犬や猫の呼吸器疾患に対するペット用酸素室の効果
犬や猫の呼吸器疾患は、呼吸の動きが制限されることで低酸素血症を引き起こすことがあります。
低酸素血症によって身体全体の細胞に酸素が行き届かず、様々な症状が現れます。
例えば、咳、呼吸困難、息切れ、食欲不振、体重減少などです。
犬と猫の呼吸器疾患における酸素療法
呼吸器疾患の代表的な病気には、肺高血圧症、犬の慢性気管支炎、肺炎、猫喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがあります。
例えば、COPDは、空気の流れが制限されたり、肺が硬くなったりすることで、呼吸困難や息切れなどの症状が現れます。
適応になるのは慢性的な気管支や肺の病気ですね
これらの病気は、犬や猫が年をとるとよく発症する傾向があります。
犬の気管虚脱における酸素療法のリスク
また、犬の代表的な呼吸器の病気として気管虚脱があります。
気管虚脱は気管の柔軟性が低下することで、呼吸がしにくくなる疾患です。
気管虚脱の患者さんにおける酸素療法は議論が分かれます
慢性的で重度の気管虚脱の患者さんでは、高二酸化炭素血症を起こしているので急に高濃度の酸素を吸入することでCO2ナルコーシスを起こす危険があります。
これによって、呼吸が止まってしまうリスクがあります。
しかし、実際には酸素吸入によって呼吸がとまってしまうことは経験したことはありません
気管虚脱で急に呼吸が苦しくなったとしても、酸素濃縮器からの酸素をかがせるフローバイ法で酸素化を行っていますが、症状は改善しているように感じます
犬と猫の心臓病と呼吸器疾患における酸素療法のリスク
酸素療法はあくまで呼吸をサポートする治療法の一つである
しかし、ペット用酸素室は、犬や猫の心臓病や呼吸器疾患に対する治療法のひとつであり、飼い主様が必ずしもペットの病気を治療できるわけではありません。
ペットの病気や症状に合わせた適切な治療を行うためには、動物病院での診察や検査を受け、獣医師と相談することが必要です。
獣医師が処方したお薬などの治療法に加えて、ペット用酸素室はペットの呼吸をサポートするための補助ツールとして使用されます。
在宅酸素療法は獣医さんと相談しながら使い方を考えましょう
酸素療法のリスク
ペット用酸素室を使用する際には、ペットの状態に応じて酸素濃度を調整することが必要です。
中でも、重度の呼吸困難を起こしている患者さんでは、急に高濃度の酸素を吸入することで、CO2ナルコーシスにより呼吸運動が抑制され呼吸が止まってしまうこともあります。
一方、酸素濃度が低すぎると、ペットの呼吸が困難になり、効果が十分に発揮されない可能性があります。
ペット用酸素室を使用する際には、適切な酸素濃度を設定することが大切です。
\酸素室のいれっぱなしについて解説しています!/
ペット用酸素室の選び方
お家の子にあった酸素室を設置しよう
犬と猫の在宅酸素療法は基本的に酸素濃縮器を使って行います。
酸素濃縮器は騒音が大きいタイプや静音タイプなどもありますので、飼い主自身や犬や猫の性格に合わせた適切な機器を選ぶことが必要です。
小型犬や猫は酸素ケージを設置する酸素療法を行うことが出来ます。
しかし、大型犬は自宅で酸素ケージに入ることは困難であるため、酸素濃縮器からの酸素をチューブから吸入する形になります。
酸素ケージのタイプ
ペット用酸素室につかうケージには様々なタイプがあります。
- 中の様子がが視認しやすいアクリル製ケージ
- 生活しやすいスクエア型やサークル
- 救急用の円筒形のクイック型ケージ
透明なケージは中が良く見えるので、どうぶつの様子が観察しやすいのが大きなメリットです。
特に、僧帽弁閉鎖不全症のワンちゃんや心筋症のネコちゃんなど心臓病をもっている子は、呼吸の様子を注意して見る必要があるので透明なケージが良いでしょう。
スクエア型
サークル
クイック型
ペット用酸素室のサービスと価格帯について
高価格帯のものは、酸素濃縮器の機器がしっかりしていたり、配達設置サービス、酸素濃度計の追加レンタルなどオプションの内容が充実していたりしています。
一方で、手頃な価格帯のものでも十分な効果が期待できる場合があります。機器を配達してもらい、ご自身で設置することで価格を抑えることが出来ます。
そのため、自宅でペット用酸素室を使用する場合は、予算に合わせた製品を選ぶことも大切なポイントの一つです。
\レンタル会社の価格の比較については以下の記事でより詳しく解説しています/
ペット用酸素室の使い方
ペット用酸素室の使い方はとても簡単です。
酸素濃縮器の電源をコンセントに指します。
これで酸素濃縮器からの濃縮酸素を酸素ケージに溜めることが出来ます。
酸素濃縮器の電源を入れて濃縮酸素を出します。
酸素流量は、ペットの病気の状態や体重によって異なります。
酸素濃度は、酸素濃度計を使用して計測し適切な酸素濃度にしましょう。
例えば、ペット用酸素室が動作している間は、火気やたばこなどの火元を近づけないようにすることが必要です。
また、ペット用酸素室のフィルターを定期的に交換することが必要です。フィルターが汚れたまま使い続けると、酸素の純度が下がり、ペットの健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
ペット用酸素室の維持管理(メンテナンス)
ペット用酸素室を安全に使うためには、定期的なメンテナンスが必要です。
酸素濃縮器のフィルターの清掃
まず、酸素濃縮器のフィルターは、定期的に交換する必要があります。
フィルターが汚れたまま使い続けると、酸素の純度が下がり、ペットの健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
消耗品の交換
また、ペット用酸素室の消耗品であるチューブやマスクなども定期的に交換する必要があります。
これらの消耗品は、長期間使用していると汚れや摩耗が進み、機能が低下するため、定期的に交換することが必要です。
配管の清掃
さらに、ペット用酸素室の本体や配管部分についても、定期的に清掃することが必要です。
清掃を怠ると、汚れがたまり、酸素の純度が低下し、ペットの健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
清掃方法については、製品の取扱説明書を参照するか、販売業者あるいはレンタル会社に相談することをおすすめします。
まとめ
心疾患や呼吸器疾患の犬と猫に在宅酸素療法が効果的であることについて解説してきました。
それではおさらいです。
- 犬や猫の心疾患や呼吸器疾患に対して、ペット用酸素室を使用することで効果が期待できる。
- ペット用酸素室を適切に使い、適切に維持管理することで、犬や猫の健康状態を改善し、ペットの生活の質を向上させることができる。
- 自宅でペット用酸素室を使用する際には、ペットの病気や症状に合わせた適切な製品を選び、適切な使い方や維持管理をすることが必要。
- ペット用酸素室は、酸素濃縮器から酸素を供給し、酸素濃度を調整することで使用する。
- ペット用酸素室の選び方は、ペットの体重や病気の状態に合わせた製品を選ぶことが必要。
- ペット用酸素室の価格帯は様々であり、予算に合わせた製品を選ぶことも大切。
- ペット用酸素室を使用する際には、火気やたばこなどの火元を近づけないようにすることが必要である。
- ペット用酸素室の維持管理には、定期的なフィルター交換や消耗品の交換、本体や配管部分の清掃が必要である。
犬や猫の在宅酸素療法には、ペット用酸素室を使用する方法があります。
自宅でペット用酸素室を使用する場合、ペットの病気や症状に合わせた適切な製品を選び、適切な使い方や維持管理をすることが大切です。
特に、ペット用酸素室は、ペットの健康をサポートするための大切なツールですので、適切な使用方法や維持管理を心がけることが必要です。
ペット用酸素室は、犬や猫の心疾患や呼吸器疾患に対して効果が期待できます。心臓病による低酸素血症や、呼吸器疾患による低酸素血症を改善することで、症状の緩和や健康状態の改善が期待できます。
ペット用酸素室を適切に使い、適切に維持管理することで、犬や猫の健康状態を改善し、ペットの生活の質を向上させることができます。
在宅酸素療法は、ペットの健康をサポートするための重要な治療法のひとつです。
自宅でペット用酸素室を使用する際には、ペットの病気や症状に合わせた製品の選び方や使い方、維持管理方法について十分に理解し、適切に使いこなすことが大切です。
また、飼い主自身がペットの健康管理に積極的に取り組むことで、ペットの健康状態をより良いものにすることができます。
最後にこの記事が少しでも飼い主様の疑問に解決し、どうぶつ達の健康に繋がれば幸いです。